ufo
ねぇ!見て!あれ!なに?!あれ!
助手席に座る彼女が右斜め前を指さして言った。そこにはいつもより暗い夜があった。その夜のThe Nightの一部分だけを切り抜いたみたいに白があった。長方形だった。白い長方形がThe Nightに浮いていた。
なんだあれ⁉︎と思った。すこし興奮していた。多分彼女も。そこにそれがあるのがとても不自然だからだった。
二人でUFOだ!!と騒いだ。
彼女は飛行機じゃない?気球じゃない?などと言った。
自分は絶対UFOだって!!!!!絶対UFOだって!!!!!と主張した。
主張しながらも一方で、北朝鮮の新しい兵器かも、、。とかなり真剣に思った。が、それを口に出さなかった。
彼女の発した飛行機じゃない?気球じゃない?という言葉は怯えから来ているように感じた。そこへ来て自分が北朝鮮の兵器かも!などと言ったらきっと彼女は泣くだろう。それは嫌だった。
絶対UFOだって!!!!!と声を張った。
しばらくするとその長方形は丸になった。
それは月だった。
うまいこと上下が厚い雲に隠れて長方形みたいに見えたのだった。
月じゃんか笑。と二人で笑った。
ホッとしたようなガッカリしたような気持ちは多分彼女も一緒だったと思う。
そんな帰り道だった。
後日電話で話をしたとき彼女にこう言った。
死ぬ前に今までの出来事が走馬灯のように、、って言うじゃん。そのときにあの夜のことが見れたら良いなって思うんだよね。
と言うと彼女は、ふぅ〜〜んと言った。
良い声だと思った。